こんにちは、愛弓です。
私は『心が繋がるほど、深く話すことを仕事にしたい』と思い、セラピストになりました。
治療院系列のクイックリラクゼーション店で働いていても、マッサージや整体をしていても、私は誰かの体を治したかったわけでも、ましてや治療の道に進みたかったわけでもありません。
私はただ、目の目にいる人のために一生懸命になれる自分でい続けたかったんです。
目の前にいる人の心を感じたり、寄り添ったり、心の中で絡まってしまったものを紐解いて、誰かが癒される瞬間を一緒に体感したかったんです。
私がしたかったのは体にフォーカスしたマッサージや整体ではなく、心にフォーカスしたマッサージや会話でした。
なのに私は、”話すこと”を諦めた時期があります。
『心が繋がるほど、深く話すことをしたい』と思ってセラピストになったのに、深く話すことをやめてしまったんです。
今回は、”心が繋がるほど深く話すこと”をするために、せっかくセラピストになったのに…”深く話すこと”を諦めてしまった理由について話していこうと思います。
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施術するようになると、泣いてしまうお客様が増えた
これはまだ、私が新卒・未経験でセラピストになって、1か月くらいの頃のお話です。
お客様の施術に入るようになると、なぜか泣いてしまうお客様が増えました。
例えば、「いろんな病院に行ったのに、体の不調の原因がわからないどころか、『本当に痛いの?』と疑われてしまった」というお話をしてくれたお客様がいました。
彼女の話を聞きながらマッサージしてると、感情のスイッチが表面化してきて…『きっと、この感情のスイッチを押したら、彼女は泣けるんだろうな~』と思いました。
『泣かせてあげた方がいいんだろうな~』と感じた時には、もうスイッチを押す言葉をかけていて、彼女は泣きだしました。
その後、彼女はすごく喜んでくれて…次回予約・ご指名をいただくようになりました。

例えば、常連のお客様にマッサージしてたら、突然、何年も前にあった事故のことを思い出し、事故の体験を話してくれました。
そして、彼女は事故のことを話しながら、泣いていました。
ずっと思い出すことのなかった事故のことをなぜ思い出したのかはわかりません。彼女自身も驚いているようでした。
でも、彼女は『周囲に心配かけないように…』と自分につらさも、吐きだしたかった弱音も感情も…我慢していたのかもしれないなと思います。
それ以降も、彼女はご自分のタイミングで、今まで通り予約してくださいました。
変わったことがあるとすれば、私を指名してくれるようになったことくらい。

学生時代から、こんな風に人が涙するのを見ることはありました。
『深く話すことを続けていきたい』と思ってセラピストになったのは、こういう体験をするためでもあるので…このお客様たちとの時間は、すごく充実したものにも感じていました。
大学時代は、数えるほどしかできなかった体験を、短期間で何度も体験できたんです。
…でも、この時の体験がきっかけの1つになって、私は”深く話すこと”をやめて、表面的に話すようになりました。
話すことへのコンプレックスから、『ひどい言葉でお客様を泣かせてるんじゃないか?』と恐くなった
私は、子供の頃からずっと、”話すこと”に自信がなく、コンプレックスを抱えていました。
『どうして、みんなのように、普通に話すことができないんだろう?』と思い、周囲の人たちの話し方を真似ようとしたり、自己啓発本を読み漁ってみたりもしました。
だけど、頭でいくら理解しても、頭で考えて話すことができず、感覚的に話してしまう…そんな自分の話し方が大嫌いでした。
目の前にいる人に向けて、『その人のために…』という気持ちがあって話すことは大好きなんです。
特に、人の相談にのる時や、心が繋がるほど深く話す感覚になってる時は、相手の欲してる言葉や必要な言葉がわかることも多いので、その感覚がすごく好きなんです。
でも、『周囲の人からどう思われてしまうんだろう?』と、その話題に関係のない第三者を想像すると、すごく恐くなるんです。
『これは、世間的にみると、どんなふうに見えるんだろう?』
『この人にとっては必要なことであっても、世間的にみると、間違ってるんじゃないか?』
『私は、間違ったことをしてるんじゃないか?』
…いろんなことを考えていくうちに、『私は間違ってるんじゃないか?』とか『私の話し方は、きっと普通じゃない』と思い、恐くなるんです。
施術中に泣いてしまったお客様たちと話してる時、すごく楽しくて、彼女たちの感情のスイッチを押してあげることにも、ためらいはありませんでした。
でも、彼女たちが泣いてる間、泣いてることを謝る彼女たちに「大丈夫ですよ~」と声をかけて、他のスタッフやお客様から見えないようにマッサージしながら隠してる間…
私の心は不安でいっぱいになりました。
『泣いてることに…気づけれてないよね??』『あ、さすがに先輩たちには気づかれてるのかな…?』
『お客様が泣いてることに気づいたら、なんて思われるんだろう? …他の人の目には、お客様をいじめてるみたいに映っちゃうのかな?』
『…もしかして、私の話し方が悪いのかな? …私、お客様をいじめてる嫌な奴なのかな?』
今になって思うと、私の話し方が悪いわけでも、お客様をいじめてるわけでもないんです。
でも、子供の頃からのクセで、不安が押し寄せてきて、そう思ってしまったんです。
不安でいっぱいになった私は、先輩たちに「私の話し方、おかしくないですか?」と何度も確認しました。
「私の話し方が変だったら、教えてください。直した方が良い所があったら、教えてください。」と、何度も確認しました。
でも、誰も私の話し方を否定することはなく、むしろ、褒めてくれることもありました。
…でも私は、話すことへの恐怖心を手放すことができなかったんです。
『どうして誰も、私の話し方の変なところを教えてくれないんだろう?』
『どうしてみんな、お客様が泣いてしまうことに関して何も言わないんだろう?…本当に気づいてないの??』
いつのまにか、私の心は、不安・心配でいっぱいになっていました。
最後の決め手になったのは、話し方をマネされたことだった
そんなある日、施術にも慣れて、指名が増えてきた私に、店長が言いました。
「もう君が話せることはわかったからさ…。
『今日は、いいお天気ですね~』みたいな、どうでもいい世間話はもういいから、そろそろ体の話をしていこうよ。」と。
店長の言いたかったことはわかってるし、それが私のためなこともわかっていました。
でも、私の心に刺さったのは、『今日はいいお天気ですね~』と、店長が私のマネをした姿でした。
私の話し方が特徴的なのかはわかりませんが…学生時代から、何度も話し方をマネされることはありました。
話すことにコンプレックスを抱えていた私は、話してる姿をマネされるたび、バカにされてるように感じていました。
…たぶん、店長が重い空気にならないように、少しふざけただけなんだろうなと思います。
でも、その言葉・マネは、私の心に深く突き刺さりました。
胸の奥に、うまく言葉にできない感情がこみあげてきて、涙が出そうになりました。
それを悟られないように、笑い飛ばし、「そうですね、体の話も頑張ってみます」とごまかしました。
自分で、『深く話すことをやめよう』と決めたわけではありません。
でも、『あぁ、私ってそんなにバカみたいな話し方してるんだな…』って傷ついた私は…
『そんなバカみたいな話し方をしてるのに、気づかなかったんだな…』って恥ずかしくなった私は…
世間話をしようとするたび、周囲の目が気になるようになりました。
恐くて、恥ずかしくて…うまく話せなくなりました。
『深く話すことを辞めよう』と決めたわけではありません。
でも、深く話すことができなくなりました。
体の話をすることに逃げて…
深く話すことができないぶん、体に触れながら、人の体や心を感じるようになりました。
マッサージをしながら、お客様の心を感じ、心の中で、お客様に向けて言葉を発し、お客様の体と会話をするようになりました。
誰のせいでもなく、話すことへのコンプレックス。でもこれは、必要な経験だった
ここまでお話してきたのが、『心が繋がるほど深く話すことをしたい』とセラピストになった私が、セラピストになってすぐに”深く話すこと”を辞めてしまった理由です。
お客様が泣いてしまったことが悪いわけじゃないんです。
店長が、私のマネをしたことが悪いわけでも、日常会話ではなく体の話をするように言ったことが悪いわけでもないんです。
それはきっと、複合的に絡み合った結果、きっかけの1つになっただけなんです。
もっと根本的に、私は自分の話し方に、話すことに…コンプレックスを抱えていたんです。
だから、そんなちょっとしたきっかけで、自分らしく話すことが恐くなってしまったんです。
深く話すことが恐くなってしまったんです。
※※※
でもね、”深く話すこと”を辞めてしまったことは、悪いことじゃないんです。
そのおかげで、手の感覚に集中するようになって、たくさんのことを学ぶことになりました。
体を通じて、”人の心”というものについても、感覚的に学んで行けたんじゃないかなと思います。
だから、当時の私が”深く話すこと”を諦めてしまったことは、結果的にはよかったのかなと、今は思ってます。
それにね、”深く話すこと”をやめたはずなのに…気づいたら、深く話すことをしてることも多々ありました。
それはきっと、誰に習ったものでも、頭で考えたものでもなく…私自身の話し方だからなんだろうなと思います。